著作権回り

「お金をかけても、よい作品になるとは限らない」という表現

「映画だって音楽だってタダで作れるわけではないのだから、見るなら/聞くなら金を払ってくれ」
海賊版P2Pでは作った人間が儲からないからやめてくれ」
という主張には納得できる。極めてまっとうな意見である。文化的にではなく、商業主義的にだが。しかし、付けた値段が妥当かどうかはまた別の問題である。内容に比して高いと思えば普通の消費者は買わない。制作にいくらかかったかなんて、消費者の知ったこっちゃないのである。

1本1万円以上していたVHSテープの時代に比べれば、 3000円で買えるDVD-Videoはずいぶん安くなった。もっとも、見る回数を考えるとレンタルした方が安いだろう。あまり見ないしレンタルもしないのでよくは知らないが。よほど気に入った作品でなければ、 DVD-Videoを買おうとは思えない。

それに比べると音楽は気に入れば何回も聞くので割と購入する方だ。しかしシングルCDなど、欲しいのは1曲だけなのに聴いたこともない曲と、使いもしないカラオケで3曲も余分に買わされて1枚1000円以上する。これを適正な価格だとはどうしても思えない。そもそも抱き合わせ販売で独占禁止法違反、公正取引委員会の勧告が出るような代物ではないのか? これを文化保護の名の下にやっておいて、売れないからP2Pのせいにするというのも違和感を感じる。言ってしまえば、売れるだけの物を適正な価格で提供していない、と皆が感じ始めたのではないか。もしくはSPが売れなくなり、LPが売れなくなり、 CDが売れなくなっているという、単なる時代の流れなのかもしれない。あるいは、もう皆が無条件で音楽に金を出す時代ではなくなったのかもしれない。

まあ儲からない、金が無くてやっていけないのなら、やめてしまえばいいのである。そうやって衰退していった産業や文化などいくらでもあるだろう。別に今の音楽や映画が特別なわけではあるまい。あとは銭金抜きでとにかく作りたい人間が細々と作っていけばいいではないか。

ついでに言ってしまえば、私的録音補償金なるものがどうして必要なのか、理解に苦しむ。コンパクトカセットもMDもDATもiPodも、聴きたい曲がパッケージとして用意されていないからわざわざ高いシングルCDを買い、メディアも自分で用意して、さらに手間暇かけてコピーしているのである。ユーザーにこんな手間をかけさせておいて、さらに金を取ろうというのだ。商売なら客の手間を省くことでお代を頂戴するのだが、まるで逆。これが文化というものなのだろうか。そんな代物なら、私はいらない。という人間からも、ハードディスクに課金することで金を巻き上げようというのだから、その商魂の逞しさには恐れ入る。